研究プロジェクト

1. 脳の分化・発達の分子機構の解明

・発生段階でニューロンが分化していくとき、どの神経伝達物質を合成するかをどうやって決めているのでしょうか

・乳幼児期における環境が、脳の発達に影響するといわれています。では、「脳の発達」とは科学的にどういうことなのでしょうか?

2.モノアミンニューロンの機能と病態との関連

人の性格はさまざまです。性格の違いは脳内のどのような違いにより形成されるのでしょうか。脳内の重要な神経伝達物質であるモノアミン類は、情動に深く関わっています。Cloningerという人は、次のような性格傾向とモノアミンとが相関しているという説を唱えています。

・新規追求 Novelty seeking ―ドーパミン
・損害回避 Harm avoidance ―セロトニン
・報酬依存 Reward dependence ―ノルアドレナリン

脳内モノアミンの生合成はどのようにして制御されているのでしょうか?また、それが性格や気質にどのように影響しているのでしょうか?脳内モノアミンニューロンの活動変化が、パーキンソン病、躁うつ病などの神経精神疾患の病態と関連するといわれています。モノアミンニューロンの機能と病態はどのように結びついているのでしょうか?テトラヒドロビオプテリンは、モノアミン生合成酵素の補酵素です。テトラヒドロビオプテリンは、生体内でどのように代謝され、どのようにモノアミン生合成量の調節にかかわっているのでしょうか?

研究内容

上記のようなテーマにアプローチするために生化学・分子生物学の手法を中心として、培養細胞や遺伝子導入動物などを用いて分子レベルから細胞、個体レベルまでの解析を行っています。カテコールアミンニューロンに分化するためには、チロシン水酸化酵素などの生合成酵素がそのニューロンで発現することが必要です。チロシン水酸化酵素やカテコールアミン合成酵素遺伝子の発現調節の分子機構を明らかにすることは、当研究室の主要なテーマの一つです。また、遺伝子改変動物で脳内アミンの量を人為的に変化させたとき、動物にどのような変化が現れるか。パーキンソン病などの神経精神疾患の発症機構を明らかにして、新しい治療法の開発へと結びつけていきたいと考えています。

テトラヒドロビオプテリン合成経路